スポーツライフを謳歌する日常の日記

スポーツに関わる仕事をしています。これまでの苦労や知恵など共有できればと思います。

部活動の外部委託について.

中学生における部活動は,本格的にスポーツに取り組むきっかけとして非常に重要な位置づけである.

 

しかし,昨今,ブラック部活など部活動の有り方,教員の関わり方などが微妙な状況であることが報道されている.

そこで本日,地元の中学校校長に現在の部活の問題点についてヒアリングをしてきた.

 

論点は,下記の2点

1.なぜ部活動の数を増やせないか.

(この中学には陸上部,水泳部がない.男子バレー部も本年度から顧問がいなくなり廃部.バドミントン部は顧問が異動したが,新任の教員が引き受けてくれたので何とか存続,入りたい部活がないから帰宅部になる生徒も多数)

 

2.外部コーチに部活指導を任せることで教員の負担を減らせるのではないか.

 

まず,論点1について.

校長の回答は次の通りであった.

現在,部活動を2人顧問体制にしているので種目を増やせない.

2人体制にしている理由は,1人の都合が悪くなってももう一人がみることができる.

7:00からの朝練習,16:30~18:30までの活動は,いづれも勤務時間外.

部活動の顧問は,勤務時間外なので学校として顧問を任せることを強制できないとのことであった.基本的に先生本人の ”顧問を引き受ける合意” があってはじめて部活動が成立するので,合意が得られないと,部活動の活動を止めざるを得ない状況があるとのこと.

また,公立中学では基本的に7年で別の学校に異動するので部活動が継続できるかどうかは顧問がいるかどうかにかかっているとのこと.

そして,教員の異動は正課授業の担当科目に紐づいているので,指導可能な部活動についてはあまり考慮されないとのこと.

 

保護者の意見

2人体制にしていることは理解できるが,その為入りたい部活動が存在しないことによる帰宅部生にならざるを得ない状況があることを理解してほしい.2人体制で部活動を存続させることと,帰宅部の生徒が増えることは両天秤にある.どちらかを手厚くすれば,どちらかが部活という教育サービスを受けられなくなる.そのことを理解して欲しい.市町村によっては,もう少し様々な部活に力を入れていて異なる状況もある.他の学校の例を参考にするなど工夫して欲しい.

 

校長の意見

部活動のあり方は,基本的に各学校に任されている.入りたい部活動があるかどうかは地域性もあるので,同じ公立中学でも部活動の種類に差があるのは仕方ないこと.〇〇市に〇〇部がないのは昔からで,仕方がない.

部活動を担当している教員は,朝7:00~,帰宅は20:00~21:00ぐらいになる.勤務時間外にこれ以上時間を割き,教員の負担を大きくしたくない.

他の市町村の例を参考にするのは教育委員会であり,教育委員会は他から情報を仕入れていると思うが,学校単位では,各学校内で実情に合わせ部活動をどのように運営するかを検討している.

 

次に論点2について,

保護者の意見

部活動の顧問を引き受けることが教員の負担になるのであれば,外部指導者に委託すればよいのではないだろうか?

文部科学省スポーツ庁も次のような資料を提示し,学習指導要領にも教育課程外の教育活動と教育課程の学習活動を関連させること,地域との連携を図り持続可能な運営体制を整えることを学習指導要領でも示している.

運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン作成検討会議(第1回) 配付資料:スポーツ庁

 

 

校長の意見

外部指導者に協力をしてもらえると,教員の負担も減り,部活動の時間中に授業準備ができるなどメリットがある.しかし,次のようなことが問題となる.

1)〇〇市の外部指導者の報酬は1年間で3万円である.

国が外部指導者の活用を促進するとか,国家資格化するとか言っても予算化するのは市町村なので,市町村の予算がつかないと外部指導者にお願いできない.

 

2)外部指導者にお願いをしても,新しい部活動を増やすためには顧問を引き受けてくれる教員がいないといけない.現状,顧問を引き受けてくれる教員はいない.顧問を引き受けるのも勤務時間外の労働をお願いすることになるので,強制はできない.

 

3)外部指導者は,特定の運動種目の専門家であるが部活動の目的は,仲間づくりや社会性を身につけることが目的である.教育の一環であることを理解した外部指導者でないと困る.

 

4)外部指導者が大会への引率ができる等,活動範囲が広がることは良いが,顧問と外部指導者の関係を上手くしないと,選手は外部指導者の言うことは聞くが,顧問の言うことは聞かないというような問題が生じる.

 

5)近隣の他校と合同の部活動にする案もあるが,球技などはチーム単位で動くので一体感が得にくい,本務校の生徒への指導が中心となりひいきになってしまうなどの問題がある.

 

まとめ

中学校の現状は良くわかったが,結局,部活動に対するリソース不足を感じた.

施設については少子化が進み生徒数が減っているので,不足はしていないと思う.しかし,生徒数の減少に伴い教員の数が減り,結果として部活動の種類が減るということが起こっている.

部活動は教師の正課外教育としての仕事の側面を持つが,勤務時間外に行われていることから,極めてあいまい,グレーゾーンの中で教員一人一人のやりがいのみで成立している.

この校長,かつては自身の専門外であった〇〇部を全国大会に導くなど熱心に部活動,生徒指導に取り組み成果を挙げてやりがいを持って取り組んできた方であった.しかし,そのことを今の若い教員に強制はできないし,過重労働を解決しないといといけないという立場であった.

 

何とも難しい問題であるが,昔はもっと熱心な先生が不良するなら部活で身体も心も鍛えてやるという感じであったと思う.今は,部活は生徒の自主的,自発的な活動だから,やりたいという生徒がいなければ,勤務時間外に顧問を引き受けて指導をするのは大変だという立場だと思う.古き良き時代の文武両道は今や遠い過去.過去には回帰できないので新しい時代にマッチしたスポーツ,教育のあり方を作って行くことが求められている.